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東京高等裁判所 昭和34年(く)55号 決定

少年 S(昭一八・一一・一三生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は、

申立人は少年Sの父であつて、同少年は昭和三四年六月一日東京家庭裁判所において恐喝、同未遂保護事件について初等少年院に送致する旨の決定を受けたものであるが、本人が悪いことをしたのは親の至らぬからのことと思うが、新聞、ラジオ、テレビや世間の人の申すように、少年院に行つて帰つた人は本当に改心しうる者は少ないということである。少年院には一緒にいる人は良い人はいないと思う、同じ年頃の人たちで友達となり、世間に出てからどうしても悪い道に行くような気がする。親と兄は必らず責任をもつて本人を改心させる故この度だけは赦されるよう重ねて御願する。近所の人も力を合せて下さるとのこと故是非この度はお赦し願いたい。それで初等少年院送致決定を取り消して帰宅せしめられたく抗告に及んだ次第であるというのである。

よつて本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査して原決定の当否を検討してみると、同少年の本件非行たるや、昭和三四年二月一五日から同年五月一三日までの間に前後一一回にわたり単独又は他一名と共謀で中学生九名から金員喝取の犯行に及んだものであり、右は同年二月一〇日同裁判所において窃盗、同未遂横領保護事件につき不処分の決定を受けて厳重訓戒せられた直後から常習的になされたものであつて、その生活史、性格及び行動傾向、生活態度、家庭環境などによる鑑別の結果をもしんしやくして考察してみると同少年を矯正教育して更生せしめるには少年院に収容する必要あるものと認められ、原決定が著しい不当な処分であるとみるべき跡は見い出されない。であるから申立人の抗告はその理由ないものとして棄却するの外ないものである。

よつて少年法第三三条第一項に則つて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 本田等)

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